子ども医療全国ネットは、国による就学前までの医療費無料制度の創設実現を求めて2001年5月に結成した 「乳幼児医療費無料制度を国に求める全国ネットワーク」(略称:乳幼児医療全国ネット)を発展的に改組し、 中学卒業までの子どもを対象にした国による医療費無料制度創設を求めて署名や自治体意見書採択に取り組んでいます。
また、自治体による子ども医療費助成制度拡充運動にも取り組んでいます。
子育ての大きな不安の一つに、子どもの病気があります。
子どもは病気にかかりやすく、抵抗力が弱いため重症化する心配も多く、病気の早期発見・早期治療を支える環境が非常に大切です。
その一つとして、子どもの医療費の心配をなくすことは、大きな子育て支援になります。
子ども医療費無料制度は、すでに全都道府県、全市区町村で実施されています。 しかし、市町村の独自制度として行われているために、財政困難などを理由として制度内容には大きな格差があります。
例えば、助成対象年齢は、中学卒業以上が大半となっていますが、就学前までの自治体もあります。 また、所得制限や一部負担を導入している自治体や、一度窓口で負担をした上で後日かかった医療費の支払いを受けなければならない自治体もあります。
どこに産まれ、どこに住んでも、子どもは等しく大切に育てられるべきです。 そのためには、国としての制度を創設し、市町村を支援していくことが求められています。 参議院「国民生活・経済に関する調査会」では2000年5月に、 すべての政党・会派一致で「国による医療費負担の軽減措置を検討すべきである」との提言を行いました。
こうしたことを踏まえ、2001年5月に「乳幼児医療費無料制度を国に求める全国ネットワーク」 (略称:乳幼児医療全国ネット)を結成して運動を進めてきました。
これまでの取り組みによって、国による医療費無料制度創設を求める「請願署名」は、 目標であった100万筆を突破し、150万筆に達しました。
また、国による就学前までの医療費無料制度創設を求める「自治体意見書」を採択した地方議会数は、 2015年7月1日現在で42都道府県議会(47議会中89.4%)、752市区町村議会(東京特別区を含む1741議会中43%)に達しました。 さらに、国による医療費無料制度創設への国会議員の賛同も広がっています。
就学前までの医療費無料化制度を求める声が広がる中で、国は、2002年から医療保険における3歳未満児の窓口負担は2割に軽減し、 2008年4月からは、就学前まで2割負担に軽減しました。
これによって、全国どこでも就学前までは、少なくとも2割負担に軽減され、 子ども医療費助成制度を行っている自治体はその負担が軽減された結果、自治体の助成制度を拡充することができました。
一方、市町村が実施する子ども医療費無料制度の状況によると、 通院について助成対象を「就学前」以上とする市区町村は、2014年で99.08%に達し、 乳幼児医療全国ネットが発足した2001年4月(20.04%)から大幅に増加しました。 入院について助成対象を「就学前」以上とする市区町村は2012年から100%となっています(2001年4月37.80%)。
さらに、2014年で高卒以上を対象に助成している市区町村は通院で202、入院では216になっています。
しかし、その一方で自治体間における助成格差があります。
どこに産まれ住んでも、子どもは等しく大切に育てられなければなりません。 そのためには、国としての制度を創設し、市町村を支援していくことが求められています。
OECD報告書(訳書「世界の社会政策の動向」2005年6月刊)では、 子どもの直接費用の減少(子どもを持っても所得が減らない措置等)などの4つの条件が出生率に影響しており、 これらの条件が高い水準に達している上位国レベルでの施策が日本で実施された場合には、日本の合計特殊出生率は約2.0まで増加すると指摘しています。
実際に、団塊ジュニア世代が出産ピークから外れる2009年以降には合計特殊出生率の低下が予測されましたが、 子ども医療費無料化の拡大や子ども手当ての創設、公立高校授業料無償化等の取り組みによって、2010年についても改善が見受けられました。
しかし、非正規労働や正社員であっても賃金が削減されるなど、雇用状態の改善は進まず、 子ども手当てが実質的に廃止されるなど、先行き不透明な子ども・子育て政策の中で人口を維持するのに必要な合計特殊出生率(2.08)への回復は、 今後は大変厳しい状況となることが予想されます。
まず、雇用を改善すること、そして、医療費の窓口負担をなくし、教育負担を軽減するなど、子育ての条件を整えることが、ますます重要になっています。
ドイツ・イギリス・イタリア・カナダ・スウェーデンでは子どもの医療費は、無料(自己負担免除)です。 国による就学前までの医療費無料制度はまだ実現していませんが、 これまでの成果をさらにひろげ、先進国と同様に子ども医療費無料化を実現するためには、 中学生までの医療費無料制度を運動の目的に加えることが必要です。
2010年3月1日の衆議院予算委員会で長妻厚生労働大臣(当時)は、 就学前の子ども医療費を無料化するのに必要な財源は年間約3,000億円であることを明らかにしました。
中学卒業までの医療費無料化を国が負担する場合には、数倍の費用が必要ですが、 全国の多くの自治体では厳しい財源の中で子育て支援のための費用を捻出し、中学卒業までの医療費無料化を実現しています。
しかし、子育てに対する費用負担の削減は、全国どこでも実現すべき課題で有り、 生まれ、住む地域によって費用に差があるべきではありません。
ところが政府は、子ども医療費無料化を実施し、 医療機関の窓口の負担を減額している市町村の国民健康保険に対する国庫補助金を減額するペナルティを実施しています。
国は、医療機関の窓口の負担を減額する(現物給付)と受診抑制がなくなって医療費が増える(波及増といいます)として国庫負担を減額していますが、 そもそも成長期にある子どもに受診抑制を発生させてはなりません。
本来なら、国が実施すべき子ども医療費無料化を、市町村が乏しい財源で実施しているにもかかわらず、これにペナルティをかけることが絶対に許せません。
こうしたことから、私たちは、「乳幼児医療費無料制度を国に求める全国ネットワーク」を改組し、 「子ども医療費無料制度を国に求める全国ネットワーク」に改組し、下記の取り組みを進めることとしました。
つきましては、参議院調査会の「提言」を実らせ、安心して子どもを産み、育てることのできる社会への第一歩とするために、 下記の点につきましてお力をお貸しください。
一、請願署名にご協力をお願いします。
①中学卒業までをめざし、当面、就学前まで国の医療費無料制度を早期に創設すること。
②子ども医療費助成制度を現物給付した市町村の国民健康保険(国保)国庫補助金の削減(ペナルティ)を廃止すること。
一、自治体意見書採択にご尽力をお願いします。